ガロアの生涯

知人が拾った本を借りる。以下すごく長い。

善人ともっぱらの評判な Lagrange の今わの言葉。

死は恐るべきものではない。苦痛なく死がやってくれば、それは不愉快なものでもない。もうしばらくすれば、私の身体は行きることを止め、あらゆるところに死がやってくるだろう。そうだ、私は死を欲しているし、死が愉快なものであることを感じている。私は自分の生涯を生き切ったのだ。数学者として多少の名声も得た。私は誰も憎んだことはない。悪いことをしたこともない。だから安んじて死んでゆけるだろう。

ありえん。かこいい。

中学高校にあたるような年齢で全寮制の学校。学生には無宗教反権力が流行り、先生はそれを権力で押さえる。105人放校の大弾圧。ガロアは放校されずにすむ。

彼の行っていた教師はバカばかりで勉強する気は起きなかった。しかし、数学に出会い没頭する。数学で闘争を忘れようと考える。途中でバカな試験官に嫌気がさして (あまりに簡単な問題を聞かれたからバカにされてると思ったらしい。要領悪すぎ。) 大学相当に落ちるが、留年したおかげで数学の信頼できる教師と友人になった。

2日でルジャンドルの「幾何学原論」(ユークリッド幾何学の本)を読破。途中からは証明は読まなくてもわかったらしい。次はラグランジュ「数学方程式の解法」(二次、三次、四次方程式の解の公式など、代数方程式の本)を読む。幾何学原論にあったような美しく完成された建築を見る感動がないと思い、不満に思う。すごすぎ。五次方程式の解の公式を作ったと思ったが、間違いだった。五次方程式の解の公式は作れないと確信し、その方法は、五次方程式の解の公式は作れないことを証明するのではなく、ある数学的記述を用いて N次方程式をその記述に代入すると、四次までだと true が、五次までだと false を返す、そんな数学的記述を発見する方法を取ることが正しいと考えた。そしてコーシーにそのへん(たぶんガロア理論)の論文を送るもコーシーさんたら読まずに食べた。

父が弾圧を苦に自殺。父はカリスマ町長だったが、最近になって権力が送った司祭が、「町長はバカだ左巻きだ」という噂を流したため弾圧されていた。アーベルがガロアと似たような発想に辿りついていることを知るが、それはアーベルが貧乏にあえいで死んだという事実と同時に伝えられる。また、アーベルの論文もコーシーさんが読まずに食べたことを知る。

父の死もアーベルが貧乏のまま死んだのもコーシーが権威主義的なのも、権力が悪い、と共和主義者カミングアウト。信用していた教師と論争「この人には、世間の恐怖と不正とがなぜ見抜けないんだろう?しかもこの人をぼくは親友だと思っていたんだ!」温度差。

もう一度バカな試験官に嫌気がさして大学相当に落ち、一流大学より少し落ちるっぽい大学に入学。学校を煽動して七月革命に参加しようとするも失敗。学校から脱出することすらできず。その後、ガロア七月革命参加を阻止しながら七月王政を指示する恥知らずな校長を批判、放校になる。

もう一度学会に論文を提出。ポアソンさんが読んだがポアソンさん理解できず。

共和党員として活動。国王を殺すべき、などの過激な主張その他で二度程サント・ペラジー監獄へ。なんかそのサント・ペラジー監獄はなんか夢のような場所で、共和主義者が集団で住んでいて、酒は飲めるは議論はできるはで、イメージとしては囚人の自主管理空間?当時の権力者はなんでそんな牢獄放置してるんだか。謎。でもガロアは嫌いだったそうな。猥談しかしない堕落した共和主義者どもめ。あと看守にいじめられたらしい。

途中監獄内で狙撃されるもガロア以外の人に命中。ガロアは告発する、すると土牢に入れられる。どっかで聞いたような話だ。で、牢獄内で叛乱が起きる。一時牢獄は占拠されたそうな。だからなんでそんな牢獄放置するんだか。

釈放。釈放の前に療養所に移ったが、その時の来訪者の女性に一目惚れ。革命家は女に弱いの法則に従い、売女に騙される。その売女はどうも権力の手先で、共和主義者の仲間割れを誘う役割だったっぽい。その売女に「私、男がいるのさ、あんたは遊び」的なことを言われて罵倒。売女はその罵倒だけを男(ちなみに共和主義者)に伝え、男はガロアに決闘を申し込む。せっせと回避しようとするが、結局マヌケ同士で決闘、死亡。死亡の直前13時間に今までの数学的成果をまとめようと決心して、本当にある程度のまとめを作ったそうな。その中の一つがガロア理論

死の直前、病院にて、数学者として共和主義者として兄を尊敬していた弟アルフレッドに

アルフレッド、泣くな。ぼくも、ずいぶん、勇気が要る。二十歳で、死ぬんだ、からな。

1832年没、享年20歳。すばらしい人だと思いました。

以上はこの本見て書きました。この本にはいくらかの創作も含まれているそうな。最後の恋愛ドタバタ決闘はガロアは秘密にする約束をしていたらしく、割と作者の創作が入ってるっぽいです。私的にはもっとダメダメな決闘だったんじゃないかと思いました。その方がこの本に描写されるガロアの人物像にしっくりくる気が。

ちなみにガロアの業績はリウヴィルがガロアの死後11年後 (1843年) に気付きました。その理論を構築したのは16歳の時で、実に15年のへだたりが。時代の最先端の先を行く男。リウヴィルはガロアの業績を理解するのに 1,2ヶ月没頭する必要があったそうな。

1870年になってジョルダンが著書でガロアを誉めて、それでやっと有名になったそうな。

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