別冊数理科学 - 量子カオスの物理と数理

図書館。難しくてよくわからん部分が多かった。

量子力学というと全ての粒子の初期値さえわかれば未来は決定論的に予言できると思ってた物理屋がミクロではそうじゃないと気付かされたもの。カオスっていうと初期値がちょっと変わると全然違う時間発展するような系のこと。なんかそれらの単語が一緒に使われてるので、初期値が全て与えられた場合に、ある程度マクロな現象 (たとえば 60年後に私が生きてるか死んでるか、とか) が予測可能か不可能か、カオスの効果がでかければ予測できないだろうし小さければ量子力学はマクロな系では古典に収束するので予測できるだろう…という最近あった疑問がどこかで解決されてるかなーと思ったのだけどよくわからんかった。

わかった部分で面白かったのは「観測問題とカオス」といものがあった。量子力学の確率的挙動は多くの人の気に入らなかったので、古典力学古典力学の影響範囲では量子力学の極限として問題なく機能しているように、量子力学量子力学の影響範囲でなにかさらに下の階層の理論の極限として問題なく機能しているに違いなく、その下の理論を探す問題を hidden variable problem とかいうのですけどそういう研究がいろいろあった。その中で Bohm という人が考えた理論は面白くて、波動関数を振幅と位相に分解して、その2変数に関して Hamiltonian-Jacobi の運動方程式量子力学的ポテンシャルなるものを導入することによって立ててしまうというものだったらしい。古典と類似な理論によって決定論が復活したよわーいかと思ったら、その量子力学的ポテンシャルによって作られる場が異様なもので、その場の強さと実際に働く力の強さが関係なかったり、遠隔においても力が減衰せずに非局所性を示してしまったりするので、やはりこれはヘンだということになったそうな。で、まあ諦めるかというとヘンだと認定されたのは Bohm の理論だけなのでまだ hidden variable は探し得る状況だったのですが、 Bell という人が、いかなる局所的な hidden variable の理論も従うはずの不等式 (かなり有名な Bell inequality) を考えだして、実際に Aspect という人がものすごく難しい実験をしたところ、その不等式は破れていてどうも、「自然を正しく記述する決定論的かつ局所的な隠れた変数の理論はつくれない」ということが示されたそうな。って書いてみると知らなかったのは Bohm の話だけだ。なんか新しい理論を作るってのが面白かったんだろう。

その後ベル不等式の新しい導入方法みたいなのを紹介してるんですけどその最後に、

そこで、これらのような Bell 不等式を最強 Bell 不等式と呼びたいと思います

そのネーミングセンスやめてくれ。きっとそういうセンスが「この世の力は四つある。重力、電磁気力、強い力、弱い力」「なんだその最後の二つは。ヘタな冗談やめれ」「ちなみに弱い力より重力の方が弱い」というようなムダな会話を各地ではぐくんできたのですよ。あと統一理論(電弱) →大統一理論(電弱強) →超統一理論(電弱強重力) もどうかと思うよねえ。

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